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職人技術が見出す、天然石の個性と美しさ
職人技術が見出す、天然石の個性と美しさ

鉱物がジュエリーになるまで

職人技術が見出す、
天然石の個性と美しさ

唯一無二の輝きを放つ、天然石のジュエリー。色味や風合い、内包物など、一つひとつの個体差がその魅力を生み出します。天然石ならではの美しさを追求する、ひとりの職人に、その技術と想いを伺いました。

職人技術が見出す、天然石の個性と美しさ

鉱物がジュエリーになるまで

職人技術が見出す、天然石の個性と美しさ

自然が生み出す石の個性、石の魅力

職人技術が見出す、天然石の個性と美しさ

ジュエリーを作り上げるうえで大切になるのが「天然石の持つ個性をいかに引き出すか」ということです。

自然の中で、何万年、何十万年という年月をかけて育つ天然石は、成長し、結晶化する過程で、さまざまなものが入り込んだり、圧力がかかったりすることがあります。それによって生まれるのが石の中の内包物「インクルージョン」や、「クラック」と呼ばれるひびや傷。

特に水晶(クォーツ)は、結晶化する際に鉱物や泥岩などを巻き込む性質があり、ルチル・クォーツや、ガーデン・クォーツといった、さまざまな種類が見られます。20年以上この仕事に携わっていますが、なんでこんな形になるんだろう、こんなものが入っているんだろうと、驚かされることばかりです。

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しかし、そうした天然石の個性に光が当たるようになったのは、ここ数年のこと。一般的に宝石の価値は、透明度が高く、ひびや割れのないものが高いとされています。しかし最近は人工石が増えていることもあり、これまで悪とされていたインクルージョンやクラックこそ、自然物の証であり、魅力だとする見方も広がってきています。

ひとつとして同じものがない天然石は、まさに「地球からの贈り物」ですね。石の個性をいかに上手く生かし、ジュエリーに落とし込むか。そこに面白みと難しさがあります。

 

原石がジュエリーとして輝くまで

ジュエリーとして扱う石の多くは、インドやタイ、中国、ミャンマー、ブラジルなど、さまざまな国から買い集めたもので、その石が最大限に輝くカットの仕方や使い方をイメージしながら選んでいます。

宝石を形作るうえで最初の工程が「石取り」。仕上がりの7割を決める最も重要な工程です。石の大きさや形、インクルージョンなどを見極めながら、できるだけ傷や割れのない部分を選び、ダイヤモンドカッターで抜き取っていきます。

抜き取る部分を誤ると、仕上がりが全く別物になるんです。ひとつの石でもさまざまな色や模様を含んだメノウや、角度によって全く違う表情を見せるラブラドライトなどは特に難しい石。どう切ればより美しく、かっこよくなるかを考えながら、慎重にカットしていきます。

カットした石は、ファセッターという円盤上の機械に石を押し当て、削っていきます。

はじめは目の粗い研磨剤で、徐々に細かい研磨剤に変え、形を整えていきます。石の硬さや種類によって力加減や工程を変える必要があり、職人の経験と知識が活かされます。

根気強く研磨を続け、大体の形ができたところで、今度は細かくファセットを刻みながら、バランスを整えていきます。

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工房の道具や機械は、先代から受け継いだものや、引退した職人から譲り受けたもの。現代は、コンピュータ化された機械もありますが、コンピューターでは“きれいになりすぎる”こともあります。石の個性や魅力を引き出すには、やはり手の感覚でしかわからないこともあるんです。

一面刻んでは磨き、また一面刻み…と、非常に手間のかかる作業ですが、これにより鮮やかで美しい石の表情が生まれます。仕上げに木の回転盤を使って磨きをかけ、石の輝きを引き出す。地道で丁寧な手作業があってこそ、世界にひとつの輝きが生まれるんです。

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磨きをかけたアクアマリン。同じ石でも、インクルージョンやクラックの活かし方によって、仕上がりが変わる。

 

天然石の本当の魅力を届けたい

カットされた、透明でピカピカな石がすべてだと思っている人も多いですが、石の魅力はそれだけじゃない。一つひとつ異なる個性に触れることで、天然石にしかない面白さ、美しさに気づいてもらいたいですね。

世界でひとつのジュエリーを身につける高揚感は、特別なもの。自分だけの石を見つける楽しさを味わってほしいです。

協力:詫間宝石彫刻